これから大学で学ぶ人、いま学んでいる人へ

もうすぐ4年間の大学生活を終えようとしている自分から、これから大学で学ぶ人、いま大学で学んでいる人に向けて、ちょっとしたアドバイスです。ひょっとしたら、大学生活を送る人以外にも、役に立つ部分があるかもしれません。僕自身の学生生活は正直言って、かなり偏っています。僕は大学に入ってから、「自分の頭を使って考えたり、いろんな人から学ぶのってこんなに楽しいんだ!」と思った人間です。ですから、学びなどに興味が全くない人には、全然役に立たない可能性もあります。ですが、こちらの記事を参考にして何か得られるものがあれば、幸いです。

A 大学時代は、実はとても短いゾ 
 まず言わなければいけないのは、大学生活は非常に短いということです。4年間で卒業すると仮定して、365日×4で考えると、実は1460日という限られた期間しかないんです。
 しかも3年生の後半からは、就職活動や卒業論文などがあるので、完全に自由な時間というのは、3年ちょっと、くらいです。
 大学生活の4年間。ぼんやりと過ごそうと思えばいくらでもぼんやりできるし、何かをやろうとすればそれなりに充実した期間にすることもできる。自由にできる分だけ、どういう時間の使い方をしたかが問われます。ただ、この時間の使い方は、外にいる誰かが判断するものではないです。そうではなくて、自分がどれだけ満足して4年間を過ごせたか、ということと関わってきます。

B その時だけにしかできないことをする 
 まず一番、大事なこと。 「大学生の今しかできないこと、社会に出たらやるのが難しいことって、一体何なんだろう?」と、ちょっと考えてみてください。それから今、自分がしていることを思い浮かべてみてください。その中で、今じゃなくてもできること、大学の4年間が終わっても、いつでもできちゃうことってありませんか? 
 自分の中で、それが本当に大切なことかどうか、心の中で秤に載せてみてください。もし、それが「大切じゃないな。別に今じゃなくてもいいな」と思ったら、たぶん、他のことに時間とエネルギーをまわした方がいいと思います。自分の中で優先順をつけてみて、大事だなと思えるものを大切にしてください。ここから全てがはじまります。

C ラクな授業は、取らない 
 授業を取る時に、ラクかどうかで決めるのではなく、「自分がその授業に興味があるかどうか。成長の糧になるかどうか」で考えてみてください。単位を取るためだけに自分が全く興味を持てない、学ぶためのモチベーションを得られない授業に参加するのは、かなり精神的に苦痛です(授業以外にやりたいことが既にある人や、途中で授業の内容に興味が持てた場合はまた別ですけども)。人間って、自分が意味を感じられないことに時間を費やしていると苦痛を感じるし、エネルギーが失われてしまいます。
 組織や仕事などの制約とは関係なしに、好きなことを好きなだけを自発的に学べる時期というのは、とても貴重です。どうせ同じ時間数の授業を受けるなら、多少キツくても、自分が興味を持っている授業、頑張りがいのある授業を取るといいと思います。少なくとも、自分にとって得るものがありそうな授業、成長の糧になりそうな授業を選んでみてください。

D 研究室に遊びに行ってみる
 ただし、何事にもミスマッチというものはあり、自分が取った授業が必ずしも面白いとは限りません。小学校や中学校、高校などと違って、大学で教えている教授たちは「研究者」です。教授というのは、何かを「研究するプロ」であって、もともと「教えるプロ」ではないんです。学生を育てることにどれくらいのウェイトを置いているのかも、教授によってバラつきがあります。だから、教え方があまり上手くない、研究内容や著作は面白いけれど、授業の講義などは面白くない、という場合はけっこうあります。そんな時にどうすればいいのか?
 そういう時におススメしたいのが、研究室に遊びに行ってみることです。授業という枠組みから離れて、個人対個人の関係で話をしてみると、授業では聞かなかったことを教えてもらえたり、教授の人柄などが見えたりしてとても面白いです。
 他人から話を聴くために必要な礼儀と、教授がやっていることに興味があるという姿勢をしっかり見せて話を聞けば、いろいろ話してくれるのではないかと思います。また、相手が関わっている分野について、何か本を読んだりして話ができる材料を持つことも大切です。
 研究室に遊びに行く時に、忘れてはいけない大事なことは、「相手の貴重な時間を奪って話を聞いているんだ」という感覚です。話をしてくれる人は、他の仕事や用事に使うことができる時間をあなたに費やしてくれます。お互いのためにも、だらだらと無駄な話をするのではなく、あらかじめ聴きたいことや質問を整理して、それを相手に伝えておきましょう。 

E ひとりになることを、こわがらない 
 正確に言うと、「他の人と違うことをするのをこわがる必要は全然ないよ」ということです。自分がやりたいことや、好きなことが他の人と違っても、全然恥ずかしがることは、ないよ、ということ。まわりと違うことに没頭することは、悪いことではないし、むしろ素敵なことだと思います。
 本当に好きなことをやるためには、「あえて」ひとりきりになって何かをすることも、大事だと思うんです。しっかりと打ち込むために、周囲からシャットアウトして自分ひとりだけのまとまった時間を作ること。僕はそのことを、芸術家の岡村太郎さんや、詩人のリルケ吉本隆明さんたちの本から学びました。どうしても紹介したいので、下に岡村さんと吉本さんの引用をのせます。
 

つまらないものでも、自分が情熱を賭けて打ち込めば、それが生きがいだ。
 他人から見ればとるに足らないバカバカしいものでも、自分だけでシコシコと無条件にやりたくなるもの、情熱をかたむけるものが見出せれば、きっと眼が輝いてくる。(略)
 何か、これと思ったら、まず他人の目を気にしないことだ。また、他人の目ばかりでなく、自分の目を気にしないで、委縮せずありのままに生きていけばいい。これは情熱を賭けられるものが見つからないときも大切だ。つまり、だめならだめ人間でいいと思って、だめなりに自由に、制約を受けないで生きていく。
 そうすれば、何か見つけられるチャンスがおのずからひらけてくる。(略)
 まず、どんなことでもいいからちょっとでも情熱を感じること、惹かれそうなことを無条件にやってみるしかない。情熱から生きがいがわき起こってくるんだ。情熱というものは、〝何を〟なんて条件つきで出てくるもんんじゃない、無条件なんだ。
 何かすごい決定的なことをやらなきゃ、なんて思わないで、そんなに力まずに、チッポケなことでもいいから、心の動く方向にまっすぐに行くのだ。失敗してもいいから。(岡本太郎『自分の中に毒を持て』青春文庫、pp.35-6)

 世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身につけないと一人前になれない種類のものです。(略)家にこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。まわりからは一見無駄に見えるでしょうが、「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、どんな職業にもかならず必要なのだと僕は思います。(略)自分の時間をこま切れにされていたら、人は何ものにもなることができません。(吉本隆明『ひきこもれ』だいわ文庫、pp.24-5,p.27)

F 「のめりこめる体質」「がんばれる体質」をつくる 
 大学を出てから何をするかは人によって全然違いますが、何をするにしても、一生懸命やれる人、目の前にあることに対してエネルギーを注げる人というのは、どこに行っても重宝されると思います。
 大学時代、何をやってもいいのですが、自分が「これ!」と思ったことに対して、のめり込んでみることは、とても良い経験になるはずです。僕の場合は、読書や陶芸でした。
 このことに関連して大事なことを一つ。何かに対して頑張ったときに、結果について考えることも大事なのですが、「方法」についても考えてみてください。つまり、「自分はどんなプロセスで、どんな方法で頑張ったのか? どういう部分を工夫して頑張ったのか? どんな風にモチベーションを維持したのか? どのようにして頑張りを結果につなげたのか?」と考えることで、他のものに取り組む時にも活かせる要素が見つかるはずです。そして、その方法をあてはめてみる。そうすることで、自分が持っている知恵や技術をフルに活用することにもつながります。これを繰り返してゆくと、自分の中にあるものがどんどん豊かになってゆきます。


 今回はここまでとさせて頂きます。「アウトプットを意識する」や「いいな、と思える人。刺激を与えてくれる人がいたら、くっついてみる。」については、また機会を見つけて書いてみたいと思います。