就職活動をしている人へ

 休日に喫茶店やカフェで時間を過ごしていると、またスーツを着た学生たちの姿が目立つようになってきた。彼らの横で本を読んでいると、説明会、エントリーシート、面接や企業の情報、自己アピール、これまで自分が何をやってきたかなどのトピックに関する話が次から次へと耳に入ってくる。少し前まで、自分も同じ状況にいたことを思い出し、少し苦い気持ちになるのだが、それはきっと、就職活動での苦しさというのが、自分の可能性を選ぶことと直結しているからだと思う。

 僕の場合、2008年の冬頃に就職活動を始めた。始めた頃はあまり突き詰めて考えずにあれこれ手当たり次第に企業を受けていたので
 就職活動の終盤になってから気がついたことなのだが、「やりたいこと」「好きなこと」だけを軸にして考えてしまうと、就職活動はたぶん上手くゆかない。やりたいことや好きなことだけを軸にして考えていたとき、僕は自分の想いや情熱だけがどんどん先走ってしまって、空回りしていました。 
 自分の考えや長所を「伝える」ことばかりに夢中になっていて、いつの間にか視野が狭くなっていたのだと思う。それらがどうすれば目の前にいる相手に「伝わる」かを全然考えていなかった。
 ここから先に書くことは、そんな僕からの個人的なアドバイス
 僕は「やりたいこと」「好きなこと」だけではなく、「やりたくないこと」「嫌いなこと」という2つの軸を持って、これからの自分の仕事や将来を考えることが、とても大事だと思います。
 たとえば、僕は車には乗らないし、テレビもあまり見ません。生命保険みたいに人の生死に関わる仕事にも興味はありません。銀行や証券も、動かすお金の規模が大きすぎて、自分の感覚が狂ってしまいそうで嫌だった。
 そういう人間が、上に挙げた分野で働いて、それでお金を稼いで、生活することに納得できるかな、と考えたら、自分は納得できないだろうなと思いました。どうしてだろうと、繰り返し、その理由を考えた。そこで初めて、自分のやりたいことが立体的に理解できたのだと思います。
 そういう風に自分が興味のないこと、仕事にしたくないことを考えることに時間を割いて、改めて自分が興味のあること、やりたいことを考えていったら、考えがまとまるようになってきて、自分がどうしてあることに興味があるのか、以前よりも少しだけ客観的に、上手く説明できるようになりました。
 学生のみんながこれから出会う面接官たちは、「この人と一緒に仕事をしたいかどうか」という基準でこちらを見てきます。
 エネルギーを感じさせることも大事。可能性を感じさせることも大事。でも一番重要なのは、目の前にいる人達に「自分がなぜそこで働きたいか」を納得してもらうことだと思います。「自分にはこれしかない」という言うだけでは、相手は納得してくれません。
 自分と全く環境やものの捉え方が違う人間にも、考えが「伝わる」ようにするには、結構骨が折れることですが、むしろ社会に出て仕事をすると、いかに相手に納得してもらって仕事を一緒に進めるか、という部分が、仕事の中心になります。
 たぶん、こんなにしんどい期間は人生の中でそうそうないと思うけれど、就職活動の期間で考えたことはきっと、自分の思想の土台になるはず! 
 ・社会にとっては大事だけれど、自分にとっては大事でない
 ・社会にとって大事で、自分にとっても大事
 という2つの軸で、いま自分が取り組もうとしている仕事がどういうものなのか、考えてみると、きっと面白い発見がたくさんあると思います。だから、少しだけ粘って、考えてみよう。